基礎体温の見方
今回は基礎体温表から読み取れる女性の体質についてご説明します。
基礎体温の変化は通常は月経周期と同調しています。月経周期とは月経開始日より計算して次の月経までを1周期と考え、およそ28日から30日と言われています。
理想的な基礎体温グラフの条件
- 月経が定期的にあり28~30日周期。
- 低温期が36.20℃以上。
- 高温期が36.80以上。
- 低温期と高温期が二相に分かれている。
- 体温変化の乱れが少ない。
- 月経期が3~7日間
- 月経痛や排卵痛がない。
- 経血に粘り気があり、サラサラしすぎず、血の塊がない。
- 低温期から高温期へ1~3日でスムーズに移行する。
月経期(3~7日)は黄体期に厚くなった子宮内膜が着床されず不要になると体外に内膜の血液が排出されるために起こります。
卵胞期(約6日間)は月経が終了すると、卵巣内の卵胞が排卵する準備に入り、子宮内膜が厚く育っていきます。
排卵期(約3~7日間)は、卵巣内にある卵胞が18~22mmの大きさになると、卵胞を刺激するホルモンが分泌され排卵されます。排卵された卵子は卵管采により、卵管へ送られます。
黄体期(約12日間)とは、排卵を終えた卵胞は黄体化ホルモンにより、黄体へと変化しエストロゲンとプロゲステロンを放出して子宮内膜を発達させ厚くするよう働きかけます。また受精し着床した時に免疫力を上げ外的要因から守るため体温を上げます。
およそ12日ほど子宮内膜の厚さを維持し、受精せず着床されずにいると子宮内膜の血液を排出し月経となります。
月経が28日よりおよそ3日以上早く来ることを月経先期といい、熱症状や炎症、ストレスによるイラつきなどにより早まることがあります。
月経が30日よりおよそ3日以上遅れることを月経後期といい、血虚や冷え、胃腸機能の低下、ホルモンバランスの乱れなどにより遅くなることがあります。
月経が早く来たり遅く来たり周期が安定しないことを月経不定期といいます。
体質による基礎体温グラフの違い
気滞/肝鬱/湿熱タイプ
体温に乱高下があり、低温期に体温が高くなったり、高温期に体温が下がるなど、グラフが二相に分かれていないのが特徴です。
体質や性格では、ストレスや我慢することがあり、イライラしがち、感情の波がある、PMSに乳房のハリや生理痛がある、ゲップやガスが溜まりやすい、多膿疱性卵巣症候群の方などにも見られます。
高温期に体温が維持できないと着床しても流産をする可能性が出てきます。
中医学では肝の気の乱れによるものと考えますので、気の滞りや流れを調節する”柴胡”などを使った処方を用いて改善をしていきます。
痰湿がある方も詰まりや熱症状などが出やすくなっているので、症状や血流をもとに判断をし状況により処方を使い分けます。
血虚/無排卵タイプ
低温期から高温期へ移行せず、体温が低めなのが特徴です。
血虚とは体内で必要な血液が不足している状態ですが貧血とは考え方が異なります。血液検査では血液の濃度を調べるため貧血と診断が出ない場合も多くあります。
月経がこない、痩せている、過度のダイエット、顔色が悪い、爪が割れやすい、抜け毛や枝毛が気になる、若いのに白髪が多い、ホルモンバランスの乱れ、多膿疱性卵巣症候群の方にも見られます。
高温期に移行しない場合には排卵がない、黄体からホルモンが分泌できてないことが考えられます。
このタイプの方は食べた物を消化し吸収する脾の働きが低下している事が多いので健脾や、血を増やす”当帰”や”芍薬”などの処方を用いて改善をしていきます。ホルモンの分泌が悪い場合には、ホルモンの分泌や生殖をつかさどる腎を補うため”鹿茸”や”亀板”などの動物生薬を併用します。
排卵がない、または月経がないときには周期に合わせて低温期には陰や血を補う処方、排卵期には気血の流れを整える処方、高温期には腎陽を強め処方を用いて、生理周期を作り改善をします。
脾気虚/陽虚タイプ
低温期が長く、高温期が短い、高温期がしっかり上がらない(理想は0.3~0.5℃)のが特徴です。
手足や膝腰に冷えがある、低温期が36.00℃以下高温期が36.5℃以下になる、生理痛がある、朝が苦手、食が細い、不正出血がある、排卵痛がある、黄体機能低下の方にも見られます。
気が不足すると、抵抗力の低下により風邪を引きやすい、体温調整機能の低下、食欲不振になりやすくなります。また不正出血などがある場合は脾気虚による脾不統血が考えられるので、補中益気湯などの内臓の固摂力を高める処方をや阿膠や田七などの止血作用のある処方で改善をしていきます。
腎気虚/瘀血/痰湿タイプ
低温期から高温期へのに移行がスムーズでなく排卵期が長いタイプは気血の巡りが悪いことによる、排卵機能の低下が考えられます。
気血の巡りが悪いと、子宮や卵巣へ血液が十分に回らず、卵胞は育ちにくくなります。また、卵胞内が破裂し排卵するのに卵胞内液が十分にある必要がありますが、津液や陰分が不足すると破裂するまで成長するのに時間がかかるため排卵期が長きなります。卵胞の黄体化が滞ると黄体ホルモンの分泌も安定せず、高温期の体温が乱れがちになります。
こういった場合には、桂枝茯苓丸や冠元顆粒などで、気血の巡りを改善し卵胞の黄体化をスムーズになるよう改善します。
排卵障害がある場合には、生殖をつかさどる腎陽を補う鹿茸などを使った処方で改善していきます。
陰虚火旺/内熱タイプ
高温期が長い、高温期の体温が高すぎる、生理周期が長い、月経期が短いグラフは体内に余分な熱があることを示しています。
体内の余分な熱は実熱と虚熱があります。実熱とは外的要因などにより発熱症状や炎症などがある状態で、虚熱とは体内の熱を抑えこむ力を持つ”陰”が不足することで熱症状が起きている状態です。
実熱型は暑がり、汗をかきやすい、顔が赤い、喉が渇きやすい、便秘しがちなどの症状があります。このタイプは”石膏”や”知母”、”黄連”など熱を取り除く清熱薬の処方を用います。
陰虚の虚熱タイプは、寝汗をかく、口が乾く、冷たい物が欲しくなる、肌が乾燥する、便が乾燥する、のぼせや火照りがあるなどの症状が現れます。陰を補いつつ熱を取る働きのある知柏地黄丸などの処方で改善していきます。
体質により基礎体温は変わります。体質によっては血虚と瘀血、陰虚と血虚、血虚と気滞など合わせ持っている方が多いですので、理想のグラフに近づくように体質を改善することで妊娠しやすいカラダを作っていきましょう。
月経時に排卵される卵子はおよそ180日前から準備されています。180日で卵子を育て排卵を迎えるのでまず体質を改善することで質の良い卵子を作ることを目標にしていきましょう。